初春文楽公演 第1部「花競四季寿」「平家女護島」「摂州合邦辻」 第2部「良弁杉由来」「傾城恋飛脚」

はじめまして、mocciと申します。

2017年の舞台、美術展、映画鑑賞など文化活動の総計は284。

内訳は、ダンスとバレエが各66、クラシックコンサート39、美術展31、映画27、オペラ17、伝統芸能16、ストレートプレイ11、落語9、宝塚2

もう取ったチケットをクリアするのにいっぱいいっぱいで、ブログも登録したまま、休眠しておりましたが。

2018年は心を入れ替え、文化活動の感想を少しずつメモしてまいりますので、文字ばっかりですが、よろしければお付き合いくださいませ。

ということで、2018の初舞台鑑賞は初春文楽公演です。

 

国立文楽劇場(大阪)

2018/1/4木 第1部11:00~ 第2部16:00~

第1部

「花競四季寿」万才・鷺娘

太夫:豊竹睦太夫、竹本津國太夫、豊竹咲寿太夫、竹本小住太夫、竹本文字栄太夫

三味線:鶴澤清友、野澤喜一朗、鶴澤清丈、野澤錦吾、鶴澤燕二郎

人形役割

太夫:吉田玉勢、才蔵:桐竹紋臣、鷺娘:吉田文昇

おめでたい万才に冬にぴったりの鷺娘。文楽の鷺娘は歌舞伎にくらべておとなしめ。

咲寿太夫さんが三枚目に座っていることに感動。だんだんお兄さんになってくるんですね。

 

「平家女護島」鬼界ヶ島の段

太夫:豊竹呂太夫 三味線:鶴澤清介

人形役割

俊寛僧都吉田玉男、平判官康頼:吉田清五郎、丹波少将成経:吉田文司、蜑千鳥:吉田簑助、瀬尾太郎兼康:吉田玉志、丹左衛門基康:吉田玉輝

平家打倒への陰謀が露見し、鬼界ヶ島に流罪となった俊寛、康頼、成経。ひたすら赦免の知らせを待つ日々の中、成経が島の蜑(海女)千鳥と夫婦の契りを結ぶ。そこに都に戻る大赦を知らせる船が来るが、俊寛だけが赦免状に名前がない。悲嘆に暮れる俊寛だが、使者丹左衛門の計らいで備前国までは戻れることがわかる。俊寛、康頼、成経、千鳥の4人が船に乗り込もうとすると、関所の通行切手が3人分しかないと、千鳥の乗船を拒まれる。悲嘆に暮れ、自ら命を絶とうとする千鳥。俊寛はもうひとりの使者瀬尾に切りつけ、使者を殺した罪により流人として島に残り、代わりに千鳥を乗せさせる。岩によじ登り、都へと去っていく船を消えるまで見送る俊寛。。。

歌舞伎の「俊寛」より文楽のほうが、取り残される俊寛の悲哀がダイレクトに伝わってくる。ラスト、俊寛がまろびながらも駆け上る岩場が回転してぐっと観客席の方にせり出してくる舞台の作りも面白い。太夫では、呂太夫さんのしみじみとした語りがよかった。人形は、なんといっても簑助さん! だいぶ足元が危なくなっていらっしゃるのか、左遣い、足遣いのほかにもうひとり介添がついていたが、それでも昨年よりはお元気そう。この人の遣う人形はどうしてかくも違うのか。うつむく角度、着物を直す仕草、すべてに余韻がある。主役級を遣っていらっしゃった頃の、あのむせ返るような色気はなくなってきたものの、愛らしさ、いぢらしさは増したようにも感じられた。

このあと、恒例のまき手ぬぐい。取れたこと、ないんですけど。。。

 

八代目竹本綱太夫五十回忌追善

豊竹咲甫太夫改め六代目竹本織太夫襲名披露 口上

織太夫は、現・咲太夫さんの父である綱太夫の前名。由緒あるその名を弟子である咲甫太夫さんに継がせるということで、口上の舞台には、上手に咲太夫さん、下手に織太夫さんのふたりだけ。文楽の襲名披露の常で、襲名する本人は一言も発せず、咲太夫さんが口上を述べる。綱太夫は1月3日に生まれ、そして命日も1月3日と、なんとも几帳面(by咲太夫さん)な方。作曲や復曲を多く手がけ、この人がいなかったら現在は聴くことができなかったでろう曲がたくさんあるそう。人気演目「女殺油地獄」の豊嶋屋油店の段や、「曽根崎心中」も綱太夫が作曲に関わっている。すごい人の前名を継いだ新・織太夫さん、がんばって!

 

追善・襲名披露狂言「摂州合邦辻」合邦住家の段

中 太夫:竹本南都太夫 三味線:鶴澤清馗

切 太夫:豊竹咲太夫 三味線:鶴澤清治

奥 太夫:竹本織太夫 三味線:鶴澤燕三

人形役割

合邦道心:吉田和生、合邦女房:桐竹勘壽、玉手御前:桐竹勘十郎、奴入平:吉田玉佳、浅香姫:吉田蓑二郎、高安俊徳丸:吉田一輔

継子俊徳丸に恋をした玉手御前は、思いを打ち明けるが拒絶される。俊徳丸はやがて病に冒され、醜くなった容貌を恥じ城を出て、許嫁の浅香姫とともに、玉手御前の父・合邦に匿われる。俊徳丸を探して合邦のもとに現れた玉手御前。病は毒酒のせいで、醜くなると許嫁に愛想を尽かされるだろうと飲ませたのだと告白し、恋敵・浅香姫に掴みかかる。浅ましいその姿に合邦は、ついに娘を刺してしまうが、苦しい息のもと、玉手御前が語る真実は。。。

清馗さんは織太夫さんの弟、清治さんは織太夫さんの伯父。咲太夫さんと清治さんが組んだのは何十年かぶりというレアな公演。咲太夫さん、体調が戻ってきた様子で、だいぶ声が出るようになってきた。清治さんとの息の合い方はいまひとつだったような・・・これから日を重ねるにつれてもっとよくなっていくはず。

先代の綱太夫も好んだ演目ということだったが、織太夫さんに合っているかどうかは、個人的には?? 織太夫さん、声も音感もいい人なので、それが味になっていくにはもう少し時間がかかると思う。今の彼なら弁慶上使みたいな、切った張ったがあるような演目で、三味線の裂帛の気合との掛け合いを聴いてみたい。

人形では、合邦の和生さんはさすがの細やかさ。勘十郎さんの玉手御前は気の強さが出ていて面白い。

 

第2部

「良弁杉由来」

志賀の里の段

太夫:渚の方:竹本三輪太夫、小枝:竹本小住太夫、腰元:豊竹亘太夫・竹本碩太夫

三味線:竹本團七、鶴澤友之助・野沢錦吾(ツレ&八雲)

桜の宮物狂いの段

太夫:竹本津駒太夫、豊竹始太夫、豊竹芳穂太夫、豊竹咲寿太夫

三味線:鶴澤藤蔵、鶴澤清志郎、鶴澤寛太郎、鶴澤清公、鶴澤清允

東大寺の段

太夫:豊竹靖太夫 三味線:鶴澤錦糸

二月堂の段

太夫:竹本千歳太夫 三味線:野澤富助

人形役割

乳母小枝:桐竹紋秀、光丸:吉田玉峻、渚の方:吉田和生、腰元藤野:桐竹紋吾、腰元春枝:吉田玉誉、花売娘:吉田蓑紫郎、吹玉屋:吉田勘市、船頭:吉田亀次、雲弥坊:吉田幸助、先供:桐竹勘次郎、良弁僧正:吉田玉男、弟子僧:吉田文哉・吉田玉翔

幼いころ鷲にさらわれ、東大寺二月堂前にある杉の大木の梢に引っかかっていたところを救われ、成人して高僧となった良弁。みすぼらしい姿となりつつも30年間息子を探し続けた母と、ようやくその杉の前で再会を果たす。

文楽でこの演目を観るのは初めて。歌舞伎でも二月堂の段しか観たことがない。その前段がこうなっていたのか、と知ることができたのはよかったが、正直、面白いとは思えない。。。志賀の里の段では八雲琴という二弦の琴が演奏される。右手の爪は生田流みたいな角爪だったように見えた。左手にはグリッサンドしやすい筒型の爪(?)をはめていたのが面白かった。

そしてこの後、本日2回目のまき手ぬぐい。また取れず。。。

 

「傾城恋飛脚」新口村の段

口 太夫:豊竹希太夫 三味線:竹澤團吾

前 太夫:豊竹呂勢太夫 三味線:鶴澤寛治

後 太夫:竹本文字久太夫 三味線:竹澤宗助

人形役割

忠三女房:吉田蓑一郎、八右衛門:吉田玉彦、亀屋忠兵衛:吉田勘彌、遊女梅川:豊松清十郎、樋の口の水右衛門:吉田玉路、伝が婆:吉田和馬、置頭巾:吉田蓑之、弦掛の藤治兵衛:吉田玉延、針立の道庵:桐竹勘介、親孫右衛門:吉田玉也、捕手小頭:吉田蓑太郎

大坂・新町の遊女梅川が、馴染みの飛脚屋の横領事件に巻き込まれ捕らえられたという実際にあった話がもと。近松門左衛門浄瑠璃冥土の飛脚」を書いている。大和の豪農孫右衛門の一人息子で、大坂の飛脚屋亀屋の養子となった忠兵衛は、新町の遊女梅川と恋仲。だが、梅川に横恋慕する八右衛門に人前で罵られ、預かっていた為替金300両の封印を切るという大罪を犯し、梅川を連れて逃げ、故郷大和新口村に逃れてくる。父にひと目会いたいと願うが。。。

口の語りは黒御簾内。後の文字久太夫さんがとてもよかった!2017年10月の素浄瑠璃の会では同段を千歳太夫さん富助さんコンビでまるっと演ってくれて、それもとても良かったのだが、そのときは忠兵衛と梅川の気持ちに感情移入。今回は義理の父である孫右衛門と梅川の心の動きにぐっと入り込んでしまった。雪景色の舞台の美しさ、ちょっと笑わせ、くすぐり、そして泣かせる、文楽を初めて見る人でも楽しめる、よくまとまった段だと思う。

しかしこの逃亡生活、梅川の科白中に、自分が目立つから移動はすべて駕籠、奈良、三輪と逃げ回る20日くらいで約40両使いはたして、とあるから、1両10万として400万! 1日20万ペース。。。ぼっちゃんって、本当に。。。

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