企画展「香合百花繚乱」

2018/02/22木 根津美術館

打ち合わせの間の空き時間でちょこっと覗いてきました。

手のひらにのるちんまりしたかわいらしさで、茶道具の中でも人気の高い香合(こうごう)。その香合に特化した展覧会。近代数寄者として知られ、「青山(せいざん)」という号をもつ初代根津嘉一郎のコレクションからはじまった根津美術館だけあり、香合のコレクションも充実。今回展示されている166点も、どれも優品ばかり。今回の展示は、室町から桃山、江戸と時代を追って、香合という小宇宙がいかに広がっていったかをわかりやすく伝えてくれる。そして、展示ケースのガラスの前に木の肘置きが設けられ、小さな香合をじっくり覗き込むことができる!

室町時代には直径20cmくらいの大香合と、「袖香合」とも呼ばれる携帯用の小香合の2種類があり、後者が私たちが香合と言っているもののルーツだそう。メイン会場の<展示室1>では、展示の最初にこの大香合が置かれている。

続いて展示されているのが初期、唐物漆器珍重の時代。個人的には漆器の香合にあまり愛がなく、堆朱のものなど彫りがくっきりしてきれいだなあ、とは思うが、ぐぐっと寄っていく感じにはならない。

次に「今ヤキ」つまり当時焼かれた国産の陶器の香合が登場。楽焼系、志野、黄瀬戸、そして備前信楽織部と、茶道具展でよく聞くやきものがずらり。このコーナー、すごくいい!侘びた風情のものが並び、足がぴたりと止まってしまった。志野宝珠香合のまあるいフォルムとつやつやした肌合い、伊賀や信楽の伽藍席香合(寺院の柱の礎石をかたどっている)も渋い。

その次のコーナーはまた漆なのでさらっと流し、いよいよ江戸初期、寛永年間ころより日本に入ってくるようになった中国産のやきもののコーナーへ。景徳鎮民窯の古染付や祥瑞(しょんずい)、福建省付近で焼かれた呉須染付や呉須赤絵そして交趾(こうち)。今も昔も茶人垂涎の香合がずらり。古染付には本当にかわいいものが多く、兜巾茄子香合、鞠挟香合、叭々鳥香合が3大お気に入り。そして宋胡禄(すんころく)!ふたつ出陳されていた柿香合がなでまわしたいくらい好き。

次の漆コーナーも斜めに見て、国産の楽焼、京焼、地方の窯のコーナーへ。ここもかわいいものが多く、黄瀬戸寿老香合、乾山写槍梅香合、赤楽曳舟香合など、ちょっと脱力系のかわいさ。

<展示室2>では茶席で香合がどのように使われるのか、そして茶室の真の主である釜を展示。ここまでで力尽きそうだけだったけれど、2階に上がり<展示室5>懐紙と短冊のコーナーへ。ここでびっくりしたのが、室町~江戸時代の和歌を記した短冊126枚がずらりと並んだ「和歌短冊(手鑑第四号所収)」。実は和歌短冊はくずし文字を読む勉強には最適だそう。なぜなら消息(手紙)は個人が個人に向けてのものなので、くせの強い字が多くなってしまう。でも、和歌短冊は歌会で読み上げられることを前提にしているので、基本的に読みやすく書かれているから。このコーナーでも、ちゃんと活字で読み方も展示されているので、短冊と見比べてみるとなんとなくわかるので面白かった。

最後は<第6室>。ここにはいつも季節にちなんだ茶道具が、茶会のように取り合わせて展示されている。今回のテーマは「花月の茶」。良寛筆の和歌の掛け物も素敵だったが、展示室の一部分につくられた茶室の床に、柴田是真筆「雛図」が!軸の中央に一対のお雛様を極彩色で描き、周囲にモノトーンで雛道具を配している。この洒脱さ、さすが是真!茶道具に興味のない方でも、この絵は絶対気に入ると思います。

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