AKRAM KHAN「UNTIL THE LIONS」

AKRAM KHAN:UNTIL THE LIONS

Duration: ca. 60 Min.

director / choreographer: Akram Khan

narration concept / scenario / text: Karthika Naïr

visual design: Tim Yip

lighting design: Michael Hulls

soundtrack composed by: Vincenzo Lamagna in Kollaboration mit Sohini Alam, David Azura, Yaron Engler, Akram Khan, Joy Alpuerto Ritter

dramaturgy: Ruth Little

dancer: Ching-Ying Chien, Joy Alpuerto Ritter, Rianto

musicians: Sohini Alam, Joseph Ashwin, David Azurza, Yaron Engler

何を見ても外れのないアクラム・カーン。これは第17回英国舞踊批評家協会賞を受賞した話題作。インド舞踊のカタックとコンテンポラリーダンスが見事に融合している。

ストーリーは古代インドの叙事詩マハーバーラタ」にあるビーシュマの死をモチーフにしたKarthika Naïrという詩人の著作「Until the Lions: Echoes from the Mahabharata」にインスパイアされているそう。

ざっくり検索した感じだと、マハーバーラタでは、下記のようになっているらしい。

独身の誓いを立てたビーシュマが異母弟のために3人の王女を略奪してくる。そのひとり、アムバーはビーシュマに婚約を要求したが拒絶され、何度生まれ変わろうとも復讐することを誓う。男女両方の性を持つ者が現れたときに武器を捨てるというビーシュマ。そこに男に生まれ変わったアムバーが現れ、ビーシュマは武器を手放し斃される。

すり鉢状になったカンプナーゲルの大ホールの、ほぼてっぺん近くから見下ろすと、そこには大きな切り株を模した舞台が。周囲に何カ所か竹のような棒の束が立っている。ぽつんと何かが置かれているなとオペラグラスを覗いてみたら、デスマスクのような仮面だった。

冒頭、奥からひとりのダンサー(Joy Alpuerto Ritter)が舞台によじ登ってきて、四つ足の獣のようにすさまじいスピードで走り回る。女性とも男性ともつかないしなやかな体つき(後でHPを見て女性と知りました)。そして上手から男(インドネシア出身のRianto)が女(台湾出身のChing-Ying Chien)をおぶって(だったと思う)走り込んでくる。このふたりがビーシュマとアムバーなのだ。ダンサー3人ともに、驚異的な身体能力で、パワフルなダンスが繰り広げられる。2017年秋に観たENBの「ジゼル」を思わせる動きが、強靱で粘り強い、鍛え抜かれたダンサーたちによって繰り広げられる。ENBのダンサーたちもコンテが上手いな、と思っていたが、本家はレベルが違った。ミュージシャンもたった4人なのだが、体の中から揺さぶられるようなカタックのリズムが観客全体にダンスを伝播させていくようだった。

濃密な舞台で60分があっという間。ダンスが進むにつれ舞台そのものに亀裂が生じ、最後、ビーシュマの死に際し、まるで火口のように下から光が射す。この物語が普遍的であり神話的であることの象徴なのか。最後にまわりから棒が舞台に放り込まれるのは鎮魂の儀式なのか? リーフレットには”ジェンダーセクシュアリティの変化というテーマを探求する”とあったが、そのあたりはちょっとわからず。。。最初に出てきたダンサーが、男性でもなく女性でもなく、もしかしたら人間でもない、何か力そのもの、みたいな感じなのかな。そういえば日本でRiantoのダンスをを観たことがあったことに、後で気がついた。北村明子さんの「To Belong」に出演していたのだ。私が観たのは2012年のワーク・イン・プログレス1だけなのだが。