Live Performance SHIBUYA  森山開次 春の祭典

2018/03/02金 19:00開演 文化総合センター大和田 さくらホール

ドビュッシー

「牧神の午後への前奏曲」(2台ピアノ版) ピアノ:福間洸太朗、實川風

前奏曲集 第1集より」

第5曲 アナカプリの丘・第6曲 雪の上の足あと・第7曲 西風の見たもの ピアノ:福間洸太朗

第8曲 亜麻色の髪の乙女・第10曲 沈める寺・第12曲 ミンストレル ピアノ:實川風

-休憩-

ストラヴィンスキー

春の祭典」(4手のピアノ版)

ダンス:森山開次

ピアノ:實川風、福間洸太朗

上演時間:1時間40分(休憩含む)

世界的ダンサー森山開次が、いま注目の若手ピアニストふたりと共演。この一夜限りというから贅沢だ。前半は「春の祭典」へのオマージュとして、ピアニストふたりがセレクトしたドビュッシープログラム。後半はストラヴィンスキー自らの編曲による4手のピアノ版で、森山開次がフルに踊る。

「牧神の午後への前奏曲」は作曲者による2台ピアノ版。上手のピアノに實川さん、下手には福間さん。それぞれコンサートピアニストとして活躍するふたりが一緒に弾くとは贅沢。オーケストラでしか聴いたことがなかったが、ピアノ版、2台の掛け合いがとても面白い! オーケストラ版では夏の午後のけだるい空気が漂ってくるようだが、ピアノ版はマラルメの詩による牧神とニンフとの物語性がより強くなるように思う。自らの音世界に浸るような実川さんと、タブレットPCの楽譜を使うほど理知的な福間さんの対比も面白かった。ちなみに前奏曲集の第6曲「雪の上の足あと」を聴くと、いつも萩尾望都の「訪問者」を思い出して胸が詰まります。。。

メインプログラムは後半、「春の祭典」。休憩が終わって席に戻ると、全体を暗く落とした舞台奥の壁にライトで、大きく日輪が。そして照明がすべて落とされ、暗闇の中にピアニストふたりと森山さんが登場する。上手のピアノに福間さん、下手のピアノに實川さん。ふたりとも、クラシックコンサート然とした前半のジャケットスタイルから、黒シャツ黒パンツにチェンジ。森山さんはアジアの民族衣装のような刺繍?織りの布をあしらった白(生成り?)の腰巻きのみのスタイル。ニジンスキー振付の春祭復刻上演も、白っぽいベースにエスニックな柄を刺繍であしらった衣装だったが、それを思い出させた。

ピアノの前、2台のピアノの間、ピアノの背後に配された山台(上手下手両方に階段をつけてある)、ときに舞台を降りて観客席最前列の前を走り抜けたり、森山さんは縦横無尽に空間を使い踊る。音楽と彼の踊りの盛り上がりにシンクロして、ピアニストふたりもスツールから腰を浮かせ、全身を使って激しいリズムを刻む。木のシルエットを壁に映し出す照明が加わり、まさに春を呼ぶ儀式がそこで行われていることを明らかにする。片手を垂直に上げてジャンプしたり、二の腕を肩のラインまで上げ肘から下をぶらりとさせたり、体の正面で両肘をほぼ直角に曲げ手を上げたり、森山さんのダンスには時折ポーズが挟み込まれる。それらがニジンスキーの春祭や「ペトルーシュカ」「牧神の午後」など、彼が踊った演目へのオマージュになっていたのだと、あとで気がついた。

ストラヴィンスキー管弦楽版とともに、4手連弾版(1台のピアノをふたりで弾く)を書いていたそう。1913年、ニジンスキーが「春の祭典」をシャンゼリゼ劇場で初演したのと同じ年に、連弾版の楽譜が出版されている(1947年に改訂版を出版)。今回の公演では、改訂版を2台のピアノで演奏。オーケストラならではの厚みのある音や金管のきらきらした音色は魅力だが、2台のピアノはまた違う面白さがあった。切り裂くようなリズムの激しさは、ピアノ版のほうが迫ってくるかも。以前、平山素子さんが新国立劇場で春祭を生ピアノの連弾でデュエットで踊るのを観たことがあるが、今回は福田さん、實川さんというピアニストとして活躍しているふたりの演奏とあって、音楽のパワーが段違いに大きかった。平山さんの公演は演出が素晴らしかったので(特にエンディング!)、音楽の印象が弱くなってしまったのかな?