宝塚花組 ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』

2018/3/24土 15:30開演 東京宝塚劇場

原作:萩尾望都ポーの一族」(小学館フラワーコミックス)
脚本・演出:小池修一郎

作曲:太田健

振付:若央りさ、桜木涼介、KAORIalive、篠懸三由岐

装置:大橋康弘

衣装:有村淳

出演

エドガー・ポーツネル:明日海りお、シーラ・ポーツネル男爵夫人:仙名彩世、アラン・トワイライト:柚香光、フランク・ポーツネル男爵:瀬戸かずや、メリーベル:華優希、ジャン・クリフォード:鳳月杏、ジェイン:桜咲彩花、大老ポー:一樹千尋、老ハンナ:高翔みず希、ブラヴァツキー:芽吹幸奈、バイク・ブラウン4世/バイク・ブラウン:水美舞斗、ほか

原作マンガが好きすぎて、最後まで観にいくかどうか迷い続けた。私にとってはもう聖典なので。。。でも、行ってよかった! みりおちゃんのエドガーは本当に美しく、ときに怖ろしく、でも哀れ。苦悩する美少年を演じさせたら天下一品と聞いていたが、本当にその通りだった。

1972年「別冊少女コミック」に第1作が発表されて以来、それまでの少女マンガの枠を超え、幅広い読者層に支持されてきた、萩尾望都の「ポーの一族」。永遠に年を取らず、人のエナジー(生気)を吸い取ることで生き続けるバンパネラポーの一族”。その一族の一員となってしまった少年エドガーは、妹メリーベルやアランを仲間に加え、時を超えて彷徨い続ける。短編、中編でさまざまなエピソードを描き、全体で200年を超える時を生き続けるエドガーの人生(?)をたどれるようになっている。この作品をミュージカル化したいと夢見て宝塚歌劇団に入団した小池修一郎さんが、1985年、ホテルのカフェで偶然居合わせた萩尾望都さんに「いつか舞台化させて欲しい」と申し出て以来30年余り、ようやく上演されることとなった。その間、舞台化を持ち込まれることが何回もあったが、望都さんは「既にお約束があるので」と断り続けたそう。

原作は時系列では発表されておらず、時代も国もあちこちに飛んでいるので、舞台版はコミックスの1、2巻分を時系列に組み直している。エドガーとメリーベルの兄妹がバンパネラポーの一族”に加わり、ポーツネル男爵と妻のシーラとの疑似家族をつくる。その疑似家族の崩壊と、旅の伴侶としてアランを一族に加えるまでが語られる。エドガーたちの足跡を追う現代(といっても、1960年代後半~70年代という設定か)のジャーナリストたちに諸設定を語らせて、原作を読んだことのない人でもストーリーを追えるようにしている。また、彼らがバンパネラであると暴くために、オカルティストとして世界史に名を残すブラヴァツキー夫人を登場させるなど、舞台版ならではの工夫も(これ、原作には出てきません)。

なぜか涙が止まらず。。。

冒頭、4歳のエドガーと生まれたばかりのメリーベルが森に捨てられるシーンから、もう、涙。成長したエドガーがメリーベルに水車をつくってやるシーンでも、涙(この伏線、拾って欲しかったなあ)。バンパネラへと変化したエドガーが、他家の養女となっているメリーベルに別れを告げ、「連れて行って!」とすがられるシーンでも涙。前半はいちいちマンガを思いだし、あの絵柄、あの科白がまざまざと浮かんできて、泣けてしまう。 これほど原作が好きだったんだと再認識させられた。印象的だったのは、バンパネラへの変化が遅くなかなか目覚めないエドガーを連れ、ポーツネル伯爵とシーラが馬車で移動するシーン。映像を上手く使い、田舎町からロンドンへの旅が映画のように表現されていた。最後、エドガーがアランを仲間に加えるシーンでは、執事によるあの名科白、「風につれて いかれた・・・?」がなかったのが残念。

明日海りおのエドガーは、いま彼女以外にこの役を演じられる人はいない!と確信させられる圧倒的な美しさ。みりおちゃん、もともと声もよかったが、本当に歌が上手くなった! 低音が心地よく響く。シーラ・ポーツネル男爵夫人の仙名彩世、歌が上手い人だとは思っていたが、演技も上手い。今回は純真で無邪気な人間のころのシーラと、バンパネラになってからの臈長けたシーラをまったく別人のように演じ分けていた。メリーベルの華優希も可憐。アランの柚香光の美少年ぶりも秀逸。でも、いい子ちゃんぶりっこのアランは、れいちゃんにとってはちょっと物足りなかったのかも? ラストのレビューで弾けて、ワルい感じで踊っているほうが素敵でした。

逆に辛かったのが、大老ポー。専科の一樹千尋をしても、何百年と生きているバンパネラの総帥とは見えなかった。花組組長・高翔みず希の老ハンナは、きりっとしていい感じのおばあさまだったのだが。瀬戸かずやのフランク・ポーツネル男爵は、ちょっと線が細すぎ? 鳳月杏のジャン・クリフォードも、もっと女たらしでよかったのに。。。

老ハンナがエドガーを一族の長にと考えてた、とか、エドガーが疑似家族に抱いている思いとか、個人的には小池さんの解釈に??な部分もあったけれど、でも、こんなに面白いなら、あと3回くらい観たかった。DVDの購入を真剣に検討しています。どうせなら、苦悩する美少年の白眉といわれる「春の雪」も買っちゃおうかな。。。